
今回は「AI時代に求められる人材とは」をテーマに、2回にわたって、必要なスキルとその習得方法について具体的に解説していきます。
第1回となる今回は、AI時代にどのようなスキルが求められるのかを取り上げます。
第2回では、それらのスキルをどのように身につけるのか、具体的な行動に落とし込んで解説する予定です。
こんな人におすすめの記事
・AI時代に、どのような人材が求められているのかを知りたい人
はじめに
以前のDreamforce参加レポートで、私は「これからAIは同僚、または後輩」だと書きました。
その後、社内の保守チームでAI活用を進めているメンバーに話を聞く中で、この表現を見直したくなりました。
AIは、確率に基づいて「もっともらしい答え」を出します。そう考えると、AIを後輩や同僚と表現してよいのだろうか、という疑問が浮かびました。
改めて考えた、私の答えはこれです。
AIは天気予報士。人は、傘を持つか決める人。
私なりには、この表現がしっくりきました。
天気予報士は優秀。でも傘は持ってくれない
天気予報士は、膨大なデータをもとに「降水確率70%」と教えてくれます。多くの場合、その予報は当たります。しかし、傘を持つかどうかは自分で決めなければなりません。
- 降水確率30%でも、大事な商談があり、服を濡らせないから傘を持つ。
- 降水確率70%でも、近所のコンビニまでなら、傘を持たずに走る。
同じ予報でも、行き先や状況、濡れたときの影響によって、適切な判断は変わります。天気予報士は、私たち一人ひとりの事情までは知りません。
AIも同じです。AIが出してくれるのは、確率に基づいた「もっともらしい」答えです。その答えを採用するかどうかは、実際の状況や目的を踏まえて、人が判断する必要があります。
社内の保守プロジェクトで起きたこと
保守チームでは、課題対応にAIを取り入れ、実装前の整理、実装、テスト、レビューといった工程ごとに役割を分けてきました。その結果、課題によっては、調査や実装にかかる時間を大幅に短縮できました。
ところが、対応方針を考える段階からAIに任せると、別の問題が見えてきました。
- 要件文の書かれた要望をそのまま実現しようとして、必要以上に大がかりな構成を作ってしまった。
- 人間なら短時間で終わる簡単な作業でも、丁寧に調査しすぎて時間がかかってしまった。
- 作業の負担は軽くなったものの、客観的に見ると、期待したほど効率は向上していなかった。
AIは、与えられた指示に忠実に答えようとします。しかし、その忠実さが、お客様の要望を絶対的なものとして捉え、必要以上の対応につながってしまうケースもあったそうです。
お客様の要望は出発点であって、答えではない。
大切なのは、要望の背景にある本当の目的を掘り下げ、必要に応じて別の方法を提案することです。
単に目の前の指示を実行するだけではできません。「今日、どこへ行くのか」を理解している人だからこそできる判断です。
現在の運用:予報はAI、傘の判断は人
- 人:課題を読み、背景や目的を踏まえて対応方針を決める。
- AI:対応方針が決まったら、実装やテストを進める。
- 人:AIが作成したエビデンスを確認し、責任を持って対応を完了させる。
メンバーによると、最も負荷が大きく、難しいのは方針を決める段階です。
課題の書き方にはばらつきがあり、文章には明記されていないニュアンスや、業務上の事情まで読み取る必要があります。そのため、この段階では人が判断した方が、速く確実に進められるケースが多かったそうです。
もちろん、AIを活用しないわけではありません。影響範囲の調査など、AIが得意とする作業には積極的に活用します。
重要なのは、AIにすべてを任せることではなく、人が主導権を持ち、AIの得意分野を活かすことです。
予報士を使いこなす人に求められるもの
AIを使いこなすには、AIに質問するだけでなく、その答えをどう活用するかを考える力が必要です。具体的には、次のような力が求められます。
- 良い問いを立てられる:「今日の降水確率は?」ではなく「午後3時、屋外の移動で雨に当たる可能性は?」と聞ける。業務と仕様を理解しているからこそ、適切な問いを立てられます。
- 予報を疑い、検証できる:「降水確率10%」でも、空模様や状況によっては傘を持つ判断ができます。AIの「影響なし」という回答を鵜呑みにせず、実際に検証することが大切です。動くものと、品質の良いものは別です。
- 状況を踏まえて判断し、その理由を説明できる:「駅から目的時まで徒歩30分で、屋根のない道を通るため、傘を持ちます」と説明できること。判断の理由を言語化すれば、今後の判断基準としても活用できます。
- 結果に責任を持てる:傘を持たずに出かけて雨に濡れても、天気予報士のせいにはできません。AIを活用した場合も、最終的な判断と結果に責任を持つ姿勢が求められます。
これをSalesforceの現場で求められるスキルとして整理すると、次の5つになります。
| スキル | 天気予報の例えでは |
|---|---|
| Salesforce技術(基礎知識・最新情報・AIの出力を検証する力) | 予報を読み解き、疑う力 |
| 業務理解(仕様書の理解・顧客との対話・本当の課題の掘り下げ) | 今日の行き先を知っていること |
| 設計力(データモデル・選定基準・トレードオフの説明) | 傘かレインコートか、走るかを選ぶ力 |
| 判断力(判断の記録・他人の判断から学ぶ力・原則の言語化) | 「この条件なら傘を持つ」という自分の基準 |
| 責任を持つ力(品質の担保・リスクの事前共有・最後まで見届ける力) | 雨に濡れた結果も引き受けること |
方針を決めるには、Salesforceを知っている必要がある
対応方針を決めるのは人です。そして、方針を決めることは、「どの機能を、どのように使って実現するか」を選ぶことでもあります。
AIが実装を担う時代になっても、方針を決める人に基礎知識と最新情報が必要なのは、そのためです。
Salesforceは、リリースのたびに機能が追加・拡充されます。以前はApexによる開発が必要だった処理も、現在では標準機能で実現できる場合があります。
最新情報を把握していなければ、古い前提のまま対応方針を決めてしまう恐れがあります。AIを活用するからこそ、Salesforceそのものを理解し、AIの提案が適切かどうかを判断できる知識が必要なのです。
おわりに
社内メンバーへのヒアリングを通じて、AIはやはり優秀な存在だと改めて感じました。一方で、AIを活用するほど、人が担うべき役割も明確になります。
どこへ行くのかを知り、予報を疑い、傘を持つかどうかを決める。そして、その判断と結果に責任を持つ。
これからのAI時代に求められるのは、AIの予報を使いこなし、自分で判断できる人だと考えています。
では、今回紹介したスキルを、どのように身につけていけばよいのでしょうか。
具体的な習得方法や実践のステップについては、次回の記事で紹介します。
→ 【実践ステップについての記事は準備中】









